抄録
'谷川文旦', '吉田ポンカン', '無核紀州'およびダイダイの幼葉を用いて, 酵素解離法により染色体標本を作製し, ギムザ, クロモマイシンA3(CMA), キナクリンマスタード(QM)で染色し, 染色体長の調査およびCMA分染パターンに基づく染色体の分類を行った.CMA染色においては, A型からE型の5種類の特徴的な分染パターンが観察された.染色体構成は, '谷川文旦'では3A+2C+4D+9E, '吉田ポンカン'では1B+1C+9D+7E, '無核紀州'では1C+8D+9E, ダイダイでは1B+2C+8D+7Eであった.'無核紀州'の染色体構成は, 同じマンダリン類であるコウジと一致した.ダイダイでは, 他の種および品種ではみられなかった, 狭窄部分が非常に伸長したC型染色体が観察された.また, 同じCMA型に分類される染色体に, CMA(+)領域の相対的な大きさの異なるものが含まれることが認められた.CMA(+)領域の相対的な大きさに基づき, 染色体長では識別できなかったD型染色体を'無核紀州'では2グループに, ダイダイでは3グループに分類することができた.これらのことから, CMA(+)領域の相対的な大きさは, カンキツ染色体の識別の指標として有効であり, これに基づく染色体構成を明らかにすることにより, カンキツ類の類縁関係について新たな知見を得られる可能性が示唆された.