水文・水資源学会誌
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原著論文
都市接地層における放射·熱·水·CO2フラックスの長期連続観測
森脇 亮神田 学
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2003 年 16 巻 5 号 p. 477-490

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抄録

東京都大田区久が原の住宅街に気象観測用のタワーを建設して, 放射·熱·水·CO2フラックスを測定し1年間の連続データを得た. 晴天日のデータをもとに各フラックスの季節変化や時間変化, および, 潜熱フラックス, CO2フラックスに対する都市の構成要素の寄与を調べた. 主要な結果は以下のとおりである. 1) 無視しえない有意な潜熱 (ピーク時で夏季に200W m-2, 冬季に30W m-2) が都市から放出されている. 夏季は「庭木」が潜熱の主な蒸発源になっていると考えられるが, 200W m-2の潜熱全てを庭木で説明しようとすると, 森林の約2倍の潜熱が庭木から放出されていることになる. また「コンクリート」からの潜熱は無視し得ない大きさであり, 特に冬季にはその寄与度が相対的に大きくなる. 2) CO2は都市から大気に向けて放出されており, その大きさは夏季より冬季の方が大きい. 夏季はCO2フラックスに大きな時間変化はないが, 冬季は8時ころと16∼23時ころにピークが見られる. 特に冬のフラックスはCO2濃度の時間変化パターンに似ており, 地表からのフラックスがCO2濃度の時間変化に大きく影響している. CO2フラックスには「家庭からの人工排出」と「自動車交通」と「庭木」が大きく影響を及ぼす.

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© 2003 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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