水文・水資源学会誌
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原著論文
都市接地層における熱·水蒸気·CO2の乱流輸送効率の相似性
森脇 亮神田 学菅原 広史
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2003 年 16 巻 5 号 p. 491-500

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抄録

都市接地層内における熱·水蒸気·CO2輸送を把握するため, 東京都大田区久が原の住宅地にて長期観測を行った. フラックスの相関係数を用いてスカラー間の輸送効率を調べたところ, 以下のことが明らかになった. 1) 熱と水蒸気の輸送効率比は, 朝方大きく日中にかけて小さくなる傾向がみられる. 朝方の不安定時は, 大きなスケールの渦構造によって混合層上端からの乾燥空気が連行されることにより, 熱に比べて水蒸気が効率的に輸送されると考えられる. 2) 日中の定常と見なせる時間帯において, スカラー間の相関係数を比較したところ, 熱·水蒸気·CO2の順で輸送効率が悪くなる. スペクトル解析·ウェーブレット解析を用いて輸送効率に寄与する渦スケールの特定を行った結果, サーマルやシアー不安定による組織渦が熱, 水蒸気, CO2それぞれの輸送を担っている. しかし, これらの輸送イベントの各スカラー量に対する効果は同一ではない. その原因として, スカラー間の濃度分布の不均一性に差異があること, 熱がアクティブなスカラー量であるのに対し水蒸気·CO2が受動的なスカラー量であること, が理由として挙げられる.

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© 2003 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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