中国華北平原における水資源不足問題の解決は急務で,最大の用水部門である農業の節水灌漑が求められる.本研究は,華北地域の石津灌区を対象に,水源から末端の耕地まで,灌漑管理の規則と実態を詳細に調べ,節水効果の視点から水管理システムを分析した.その結果,以下のことが明らかになった. (1)水利費は基本的に従量制であるが,水管理を担当する管理局は独立採算であること,各村では面積割り賦課になっていることから,管理局および農民のいずれにとっても節水動機が働きにくい. (2)水利費は現在でも十分に高いものの,灌漑実績は適正用水量を大きく超えていることから,水価の上昇によって単純に節水効果が発現するとはいえない. (3)つぶれ地と水管理労働のコストという視点から,当地区では,斗渠の増設による耕区長辺長の短縮が節水対策としての現実的な方法である.