安全な水おいしい水への要望の高まりとともに水道水源となっているダム貯水池の水質保全が大きな課題となっている.特にアオコや淡水赤潮など植物プランクトンの発生に伴う富栄養化問題は発生する植物プランクトンの種類や量によって具体的な利水障害の内容や程度が異なり,社会的な影響が大きいことから対策が急務となっている.その代表的な水質問題として上水道のカビ臭問題がある.原因となるカビ臭物質は,放線菌の他,貯水池で発生する特定の植物プランクトンによって生産されることが知られている.水資源機構が管理するダムにおいても1984年から1990年にかけてカビ臭問題が集中的に発生した.原因は藍藻類の
Phormidiumが生産する2-MIBであった.水資源機構ではカビ臭問題が発生した4つのダム貯水池においてカビ臭の発生期におよそ週2回の頻度で
Phormidiumとカビ臭に関する詳細な調査を行い,2-MIB濃度とカビ臭の閾値との関係や生産された2-MIBの多くが水中に移行していることなど,現場での貴重な知見を得ることができた.
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