水文・水資源学会誌
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ラドンと水質から推定される湧水周辺の水文・地球化学的特性について
—福岡市西区幸の神湧水における事例—
松本 大毅広城 吉成新井田 浩神野 健二岡村 正紀仲島 賢田籠 久也右田 義臣
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2004 年 17 巻 6 号 p. 627-634

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抄録
福岡市西部の九州大学新キャンパス建設地には,幸の神(さやのかみ)湧水が存在し,新キャンパス予定地周辺の貴重な農業用水源となっている.新キャンパス造成工事は2000年6月より開始されているが,新キャンパス建設工事による幸の神湧水の水量と水質への影響を評価するためには,水文・地球化学的な調査が必要である.
本研究では,幸の神湧水周辺の水文特性を把握するために,トレ-サ-としてラドンを用いた.その結果,幸の神湧水の滞留時間は3週間以上であることがわかった.源流(R1)から砂防ダム流入点(R2)において,目視で確認できる表流水の流入がなかったにもかかわらず,流量観測の結果から,流量は約4倍に増加していることがわかった.流量増加の原因は,化学種濃度およびラドン濃度の低い表層中の浸出水であると考えられる.したがって,R2における化学種およびラドン濃度はR1の濃度に比べ希釈されていることがわかった.幸の神湧水の起源は北西の山側(W1)からの地下水のみならず,砂防ダム側からの水の影響も示唆された.
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© 2004 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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