水文・水資源学会誌
Online ISSN : 1349-2853
Print ISSN : 0915-1389
17 巻 , 6 号
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original research article
  • ウォンサ サニット, 清水 康行, 岩井 聖
    2004 年 17 巻 6 号 p. 593-606
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/01/14
    ジャーナル フリー
    流域の土地利用形態の変化および河道形状の変化は洪水および土砂量流出のポテンシャルに強く影響を与える.従って,洪水流量および土砂流出量の因果関係を予測する上で,河道の形状および土地利用変化などの要因を取り込んだモデルの開発は極めて重要である.しかしながら,流域毎に異なる地形・地質・植生などの条件が土砂流出量に与える影響,さらには生産された土砂が下流域へ輸送される過程などはいまだに明らかでない.流域の土地利用形態や河川の形状変化の影響を検討することは,沖積河川の水と土砂の収支を理解する上で有効である.本研究は北海道地域の6河川流域を対象として河道の形状(勾配と流路延長の違い)および土地利用変化の二つのシナリオについての比較検討を行った.この結果,河川流路形状の違いはピーク流量に対して著しい影響を及ぼすが,土砂流出量には有意な影響は認められなかった.これに対して,土地利用の変化は斜面での土砂生産量に対して大きな影響があることが認められたが,流域全体としては洪水のピーク流量にはそれほど大きな影響を及ぼさないという計算結果が得られた.
  • 工藤 勝弘, 河上 智行, 山田 正
    2004 年 17 巻 6 号 p. 607-617
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/01/14
    ジャーナル フリー
    ダム貯水池の富栄養化問題は,主として貯水池内で発生する植物プランクトンによるものである.植物プランクトンの発生量には貯水池の栄養塩濃度とともに滞留時間が大きく関わっている.浮遊性の植物プランクトンは湖やダム貯水池などいわゆる閉鎖性水域で発生しやすいことから,滞留時間が長いほど富栄養化問題が発生しやすいとの認識が強く残っている.しかし,実際のダム貯水池での植物プランクトンの発生状況を見ていくと必ずしも滞留時間の長期化が植物プランクトンの発生量の増加に結びつかないこともみられる.そこで,微生物の培養によく用いられる連続培養実験法を利用して,滞留時間と植物プランクトンの増殖について実験的な考察を試みた.その結果,供給する栄養塩濃度が一定でも,滞留時間によって培養器内の植物プランクトン濃度は変化し,一定以上の滞留時間の増加はむしろ培養器内の藻類濃度を減少させることを明らかにした.
  • 青田 容明, 熊谷 道夫
    2004 年 17 巻 6 号 p. 618-626
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/01/14
    ジャーナル フリー
    河川や小水路に配置する事を想定した多数の水質自動監視システムに適用する通信経路選定問題について,遺伝的アルゴリズムによる手法を提案し,その有効性を示した.対象となる測定機器は待機と起動の二状態を持ち,無線によってデータの送受信を行うと仮定する.この時,機器の起動から測定データ送信までの一連の処理を効率的に行うためには,処理全体にかかる時間を最小にするための最適な通信経路を選定する必要がある.これは単純な二点間の経路選定問題とは異なり,一般に多点対1点間の処理時間を最小にする経路選定問題となる.また,各監視システムは他から送られた起動要求を受信することで待機から起動状態へと移行し,その後別の機器へ起動要求メッセージを送信する.したがって,全体の処理時間は機器間距離に依存した無線通信の実効速度だけではなく,起動要求データを受け取って下位へ送信する回数,すなわち,ネットワークの階層数にも依存する.本論文では,総処理時間を決める各処理過程を三段階に分け,これをコスト関数として遺伝的アルゴリズムを本問題に適用した.計算には琵琶湖に流入する一級河川の位置データを用いて総時間を評価し,遺伝的アルゴリズムの有効性とその適用範囲を示した.
  • 松本 大毅, 広城 吉成, 新井田 浩, 神野 健二, 岡村 正紀, 仲島 賢, 田籠 久也, 右田 義臣
    2004 年 17 巻 6 号 p. 627-634
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/01/14
    ジャーナル フリー
    福岡市西部の九州大学新キャンパス建設地には,幸の神(さやのかみ)湧水が存在し,新キャンパス予定地周辺の貴重な農業用水源となっている.新キャンパス造成工事は2000年6月より開始されているが,新キャンパス建設工事による幸の神湧水の水量と水質への影響を評価するためには,水文・地球化学的な調査が必要である.
    本研究では,幸の神湧水周辺の水文特性を把握するために,トレ-サ-としてラドンを用いた.その結果,幸の神湧水の滞留時間は3週間以上であることがわかった.源流(R1)から砂防ダム流入点(R2)において,目視で確認できる表流水の流入がなかったにもかかわらず,流量観測の結果から,流量は約4倍に増加していることがわかった.流量増加の原因は,化学種濃度およびラドン濃度の低い表層中の浸出水であると考えられる.したがって,R2における化学種およびラドン濃度はR1の濃度に比べ希釈されていることがわかった.幸の神湧水の起源は北西の山側(W1)からの地下水のみならず,砂防ダム側からの水の影響も示唆された.
  • 佐藤 祐一, 萩原 良巳
    2004 年 17 巻 6 号 p. 635-647
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/01/14
    ジャーナル フリー
    河川開発と環境保全がトレード・オフの関係にあり,ステイクホルダーの間でコンフリクトが生じている際には,各ステイクホルダーの意思や意向を適切に評価した上で意思決定に結び付けていく必要がある.しかし河川開発代替案の総合評価を行うためには,どうしても河川開発と環境保全といった別次元の利害を突き合わせて評価しなければならない.
    そのために本研究では,各ステイクホルダーの意思や意向を表現するための「満足関数」というものを,ステイクホルダー間の整合性を満たした形で構築するための手法の提案を行う.そして,「グループ満足関数」という代替案評価モデルの構築を行うが,これは各ステイクホルダーの満足関数により成り立つ.
    そして,このモデルを吉野川可動堰問題に適用した.ここでは,治水と生態系に関するステイクホルダーの満足関数の構築を行い,代替案の評価を行った.また,ステイクホルダー間の歩み寄りを明示的に考慮するために,選好構造差独立性の概念に基づくモデル構築を行ったが,これにより歩み寄りの程度と代替案選択の定量的な関係が得られた.
technical note
commentary article
  • 村瀬 勝彦
    2004 年 17 巻 6 号 p. 654-662
    発行日: 2004年
    公開日: 2005/01/14
    ジャーナル フリー
    世界水アセスメント計画の第1回世界水発展報告書をパイロットケーススタディ(東京大都市圏)を中心に紹介し,第1回世界水発展報告書で明らかになった指標構築における課題を解説する.人口・資産の密集した東京大都市圏は長年の治水対策による洪水氾濫地域の減少と,流況安定に向けた努力によって都市・産業に対する水供給の高い信頼性に支えられてきた.しかし,人口・資産のさらなる集中により洪水被害総額の減少は相殺され,水供給の安定化が新たな水需要を発生させることになった.また,水管理に求められるニーズが多様化・複雑化し,情報の共有や各種リスクとの共存といった,より高度な水管理が必要とされるようになった.このことから東京大都市圏のケーススタディでは特にリスク管理,賢明な水管理,水資源の分配,生態系の保護及び知識ベースの確立に焦点を当て,特にリスク管理や生態系の保護として情報の共有を目指した指標作成の取組みが紹介されている.第1回世界水発展報告では具体的な指標は示されなかったが,空間及び時間スケール,指標の表現方法,一貫性,指標の解釈,データ整備が今後の指標構築の課題として取り上げられた.
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