河川開発と環境保全がトレード・オフの関係にあり,ステイクホルダーの間でコンフリクトが生じている際には,各ステイクホルダーの意思や意向を適切に評価した上で意思決定に結び付けていく必要がある.しかし河川開発代替案の総合評価を行うためには,どうしても河川開発と環境保全といった別次元の利害を突き合わせて評価しなければならない.
そのために本研究では,各ステイクホルダーの意思や意向を表現するための「満足関数」というものを,ステイクホルダー間の整合性を満たした形で構築するための手法の提案を行う.そして,「グループ満足関数」という代替案評価モデルの構築を行うが,これは各ステイクホルダーの満足関数により成り立つ.
そして,このモデルを吉野川可動堰問題に適用した.ここでは,治水と生態系に関するステイクホルダーの満足関数の構築を行い,代替案の評価を行った.また,ステイクホルダー間の歩み寄りを明示的に考慮するために,選好構造差独立性の概念に基づくモデル構築を行ったが,これにより歩み寄りの程度と代替案選択の定量的な関係が得られた.
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