水文・水資源学会誌
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原著論文
地球温暖化に伴う積雪量変化の地域的特性
—モデルと観測データの比較—
赤澤 悠子沼口 敦江守 正多
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2005 年 18 巻 5 号 p. 510-520

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抄録
地球温暖化に伴う積雪深の変化の地域的特性とそのメカニズムを調べるために,観測データおよび気候モデルの結果を解析した.観測データに見られる積雪深のトレンドは,地域によって大きく2つのタイプに分類された.一つは積雪期を通して大幅な減少が見られるタイプで,カナダのほぼ全域および旧ソビエトの北緯60°以南で顕著に見られた.もう一つは冬期に増加し雪解け期には減少するタイプで,旧ソビエトの北緯60°以北の内陸部に顕著に見られた.モデルの結果における積雪水当量トレンドの地域的特性は,これらの観測されたトレンドとよく類似していた.そこで,モデル中でこの地域的特性をもたらすメカニズムを調べるため,モデルの結果における積雪水収支の変化を解析した.積雪期を通じて積雪水当量の大幅な減少が見られる地域では,温暖化に伴い降水量は増加するものの,降水のうち降雪の割合が減少することにより降雪は減少し,融雪は増加していた.一方,冬期に積雪水当量の増加が見られる地域では,冬期の降水はほとんど降雪のまま増加し,融雪も冬期にほとんど起こらないままだった.
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© 2005 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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