水文・水資源学会誌
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原著論文
地域洪水頻度解析と洪水災害予測: 石狩川流域のスケーリングと洪水氾濫図
葛葉 泰久岸井 徳雄小松 陽介友杉 邦雄
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2005 年 18 巻 5 号 p. 557-574

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抄録

著者らは,以前から,北海道の流域が,スケーリングの枠組みの一つであり,融雪流出が卓越する地域でよく見られる地域の特徴であるsimple scaling にほぼ従うと主張してきた.それに対し,豪雨流出が卓越する地域のスケーリングの特徴として知られるのがmultiscaling である.この論文では,この地域の洪水流量のスケーリングがどちらの枠組みに従うのかを,さらに厳密に検討した.尤度比検定の結果は,その地域の洪水流量が,multiscaling に従うことを示唆している.そして,他の検討方法も含め,著者らは,「北海道地域の洪水流量は,multiscaling に従うと考えても良いが,他の日本の地域と比較すると,simple scaling の傾向が強い」と結論付ける.この結果,洪水流量と流域面積間に成立する「互いの対数が線形」という関係における勾配(スケーリング指数という)を,再起確率(再現期間)ごとに求める必要が出てきた.そこで,以下の手続きで,石狩川流域における洪水氾濫図を作った.
1)観測点で,T年洪水流量を求める;2)Tごとに,スケーリング指数を求める;3)観測点のT年洪水流量を,未観測点に移送する(観測点のない地点の洪水流量を予測する);4)得られた洪水流量が破堤によって,氾濫したとして,氾濫計算をする.

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© 2005 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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