抄録
黄河流域(中国・内蒙古)の灌漑トウモロコシ畑において,TDRセンサーを用いて体積含水率と土壌溶液導電率を同時連続測定し,解析した.その結果は以下のように要約できる:
(a)降水量の少ない春から初夏にかけて,地下水面から根域へ供給された積算水分量は約80 mmと推定された.これは前年秋に加えられた灌漑水に由来するものと思われる.
(b)少雨期に土壌水分が地下水面から土壌表面まで移動する際,地下水に含まれる塩分は根域を通過して土壌表面まで運ばれた.
(c)灌漑が行われ,あるいは強雨が発生したとき,加えられた水の一部は,土壌表面の集積塩分の多くが解け込む前に,大間隙を通って速やかに流下した.一方,集積塩分が十分溶け込んだ残りの水は,小間隙内をゆっくり移動した.
(d)土壌表面に大量の水が加えられると,小間隙内の溶解塩分は短距離間急激に流下し,より下層へ集積した.この結果から,塩分のリーチングに対しては,連続湛水灌漑よりも少量間断灌漑の方が有効であるということが再確認できる.