阿蘇谷西部の難透水層は地下200 m付近にあり,これが阿蘇谷から阿蘇外輪山北麓にかけて低下していると考えられている.さらに,阿蘇谷西部の地下水や河川水がSO
42-に富んでいることを考慮すると,阿蘇外輪山北麓のどこかで SO
42-に富んでいる水が湧出している可能性がある.河川水質は集水域の湧水の水質を反映するので,本研究では阿蘇外輪山北麓を流れる杖立川上流域の河川水について,河川が合流する手前の本流側と支流側で水質調査を行なった.本稿ではその結果について示し,これに基づく考察を行なった.
杖立川上流域東部を流れる田の原川や志賀瀬川では,Na
+やCl
-に富んだ河川水がみられ,これらは河川上流部にある温泉の影響を受けている.また,杖立川上流域西部を流れる湯田川ではSO
42- に富んだ河川水がみられ,これは湯田温泉から供給されている.SO
42-に富むという意味で,湯田温泉と阿蘇谷の地下水や河川水は共通しているが,湯田温泉のSiO
2濃度は阿蘇谷の地下水や河川水のSiO
2濃度よりも小さい.このことから,湯田温泉のSO
42-に富んだ水は阿蘇谷起源であるとは言えない.
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