水文・水資源学会誌
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原著論文
粗い空間刻みでの浸透数値計算におけるグリッド境界透水係数計算法相違の影響
白木 克繁
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2007 年 20 巻 2 号 p. 85-92

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抄録

粗い空間刻み幅を用いて浸透数値計算を行う際に,グリッド境界透水係数の算出法の相違がどのような影響をもたらすか比較検討した.また,新たに粗い空間刻み幅においても定常状態の圧力水頭分布を近似計算できる,変動重み付け法(η法)を提示した.計算手法として,圧力水頭算術平均法,体積含水率算術平均法,透水係数算術平均法,透水係数相乗平均法,透水係数調和平均法,上流法,η法を比較した.定常状態の数値実験より,上流法,η法を除いて,粗い空間刻み幅の時に圧力水頭分布に空間的な振動が発生することが分かった.ここで,透水係数算術平均法での振動幅がもっとも大きかった.乾燥土壌への浸透数値実験より,透水係数算術平均法,上流法,η法で安定して計算可能であることがわかった.一方,圧力水頭算術平均法,体積含水率算術平均法,透水係数相乗平均法,透水係数調和平均法において,空間刻み幅を粗くした場合に計算不能になる場合があることが分かった.排水過程での非定常数値計算より,圧力水頭算術平均法とη法が粗い空間刻み幅においても精度の良い近似結果を示すことが分かった.総合的に見て,粗い空間刻み幅を用いる場合はη法が有効であるが,事前にη値を算出するという前処理が必要になる.

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© 2007 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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