水文・水資源学会誌
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20 巻, 2 号
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原著論文
  • 白木 克繁
    2007 年 20 巻 2 号 p. 77-84
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/23
    ジャーナル フリー
    粗い空間刻み幅で鉛直1次元浸透の数値計算をする際のグリッド境界透水係数計算のための重み付け係数について検討を行った.重み付け係数として,それぞれの計算空間刻み幅ごとに,定常状態を再現できる値を算出した.この重み付け係数の分布から,空間刻み幅が十分細かい時は,飽和領域付近を除いて圧力水頭算術平均値から透水係数を算出することが適切であることが分かった.また空間刻み幅が粗い場合は,適切に圧力水頭分布を計算できる重み付け値として,飽和領域付近では1.0(上流側圧力水頭値でグリッド境界透水係数を算出する),乾燥領域では0.5(圧力水頭平均値からグリッド境界透水係数を算出する)まで段階的に変化することが分かった.また,透水係数算術平均法,透水係数相乗平均法,体積含水率算術平均法との比較を行ったところ,これらの計算方法は空間刻み幅を粗くした時にグリッド境界透水係数を過大に算出することが分かった.これは,定常状態において圧力水頭分布に空間的な振動をもたらす原因となる.
  • 白木 克繁
    2007 年 20 巻 2 号 p. 85-92
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/23
    ジャーナル フリー
    粗い空間刻み幅を用いて浸透数値計算を行う際に,グリッド境界透水係数の算出法の相違がどのような影響をもたらすか比較検討した.また,新たに粗い空間刻み幅においても定常状態の圧力水頭分布を近似計算できる,変動重み付け法(η法)を提示した.計算手法として,圧力水頭算術平均法,体積含水率算術平均法,透水係数算術平均法,透水係数相乗平均法,透水係数調和平均法,上流法,η法を比較した.定常状態の数値実験より,上流法,η法を除いて,粗い空間刻み幅の時に圧力水頭分布に空間的な振動が発生することが分かった.ここで,透水係数算術平均法での振動幅がもっとも大きかった.乾燥土壌への浸透数値実験より,透水係数算術平均法,上流法,η法で安定して計算可能であることがわかった.一方,圧力水頭算術平均法,体積含水率算術平均法,透水係数相乗平均法,透水係数調和平均法において,空間刻み幅を粗くした場合に計算不能になる場合があることが分かった.排水過程での非定常数値計算より,圧力水頭算術平均法とη法が粗い空間刻み幅においても精度の良い近似結果を示すことが分かった.総合的に見て,粗い空間刻み幅を用いる場合はη法が有効であるが,事前にη値を算出するという前処理が必要になる.
  • 臼谷 友秀, 中津川 誠, 星 清
    2007 年 20 巻 2 号 p. 93-105
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/23
    ジャーナル フリー
    洪水予測といった実用上の観点から積雪層の貯留効果を考慮した融雪流出モデルはほとんどない.これまで筆者らは,積雪層の貯留効果を貯留関数法によってモデル化(以下,積雪浸透モデルと呼ぶ)し,その機構を組み込んだ融雪流出モデルを開発してきた.しかしながら,積雪浸透モデルは,融雪水の浸透をモデル化したもので,大雨時の浸透も表現できるか否かは検証されていない.また,融雪期全体の流出波形を再現し得る流出モデル定数を客観的かつ簡便に同定することが難しく,融雪流出モデルを適用する際の大きな障害となっている.
    本研究では,まず,融雪期における大雨時の雨量とダム流入量の相互関係を分析し,融雪期の流出量を推定する場合,大雨に対しては積雪層の貯留効果はないと考えた方が合理的であることを示した.さらに,融雪期の比較的大きな規模の1出水で最適流出モデル定数が得られれば,複数年に亘って融雪全期間のハイドログラフを実用上十分な精度で再現できることがわかった.以上の結果,本研究で検討した積雪貯留に対する解析手法ならびに流出モデル定数の最適同定法は,融雪流出モデルの再現性と汎用性を向上させるのに有効であることが確認された.
  • 佐合 純造, 伊藤 一正
    2007 年 20 巻 2 号 p. 106-115
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/23
    ジャーナル フリー
    これまで河川流域単位で定量的に議論されてこなかった社会,経済指標に焦点を当てて,全国109の一級水系で定量比較を行った.その結果,流域によって各指標の値に特徴が見られた.また,各指標と河川特性の関係を見るため,河川BOD値を例に取り上げて相関を求めた結果,人口密度,刑法犯認知件数,失業率,高齢化率等と相関が認められた.さらに,これらの指標を変数として主成分分析を行ったところ,第1主成分と第2主成分で50%以上の寄与率が得られて,各主成分はそれぞれ流域の「都市化」,「健全性」の総合指標となり,河川計画や管理への活用の可能性があることを示した.
  • 王 弋, 高瀬 恵次
    2007 年 20 巻 2 号 p. 116-124
    発行日: 2007年
    公開日: 2007/04/23
    ジャーナル フリー
    浸入能の概念を導入したモデルは,流域の水収支や流出,土壌水分などを解析するためのモデルの1つで,これまでに試験流域の長期間流出解析に適用され良好な結果を得ている.本論文では,浸入能及び浸透サブモデルに修正を加え,とくに降雨時の流出に注目して,従来のモデルによる計算結果と比較することによって,その妥当性を検討した.その結果,修正モデルによる計算流出量は降雨時の流出量やピ-ク流出量の実測値とよく一致し,流域の水循環過程をより物理的に表現していると判断された.
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