水文・水資源学会誌
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原著論文
自己組織化マップを利用した豪雨時の成層状態の診断
西山 浩司神野 健二
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2007 年 20 巻 3 号 p. 156-166

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抄録

豪雨場の特徴を把握するためには,大気の成層状態に関する詳細な情報,特に,その面的な変化に関する情報が必要である.しかし,成層状態は,気温と水蒸気量の鉛直分布から構成される多次元情報なので,その面的な特徴を解釈することが難しい.そこで,本論文では,多次元の成層状態を一塊の情報として捉え,自己組織化マップ(SOM: Self-Organizing Map)を用いて,北部九州を対象に,梅雨期の成層状態のパターンを分類した.その結果,梅雨期の成層状態に関する特徴的なパターンを把握することができた.次に,1999年6月29日に福岡都市圏を襲った豪雨イベントを対象にして,SOMによる成層状態の診断を行い,そのパターンを対象領域内に表現した.その結果,SOMの特性に着目することによって,この豪雨イベントに対する成層状態を比較的容易に把握することができた.以上の解析から,従来の煩雑な成層状態の解析の代替手段として,SOMによる成層状態の診断と,そのパターンの面的表現を組み合わせることによって,豪雨発生環境に関する詳細な情報を系統的かつ簡単に解釈することが可能になると期待される.

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© 2007 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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