水文・水資源学会誌
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原著論文
ビエンチャン地点でのメコン川の窒素およびリン濃度の季節変動
飯田 俊彰ソンポン インカムセン吉田 貢士伊藤 慎之介
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2007 年 20 巻 3 号 p. 226-234

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抄録
メコン川の栄養塩類濃度の現状と特性を明らかにするため,ビエンチャンの本流で高頻度の連続観測を行なった.試料を2002年4月から2005年12月まで週2回採取し,その窒素およびリン成分を分析した.過去の月単位の観測では同定されなかった詳細な季節変動特性が,高頻度の観測によって明らかにされた.全体的に,おそらく試料採取地点上流の人口密度と耕地面積率が低いため,栄養塩類濃度は低かった.しかし,アンモニア態窒素濃度は最近の数十年間に上昇傾向を示した.窒素濃度は5月に突然上昇し,この上昇は低水期後の最初の小さな流量上昇と同時に起こった.乾季後の最初の流出が流域や河床に蓄積した窒素分を河川へ運搬し,窒素濃度のこの急激な上昇を招いたことが示唆される.6月以降,窒素濃度は,洪水期の流量増大に拘らず,単調に減少した.6月以降の窒素供給は洪水期の莫大な水量によって希釈されたと考えられる.一方リン濃度は,4月から6月まで徐々に上昇し,洪水期には大きく変動した.洪水期の莫大な水量による連続的な希釈効果と時折起こる大規模な土砂流出が,洪水期のリン濃度の変動特性を説明するものと思われる.
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© 2007 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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