水文・水資源学会誌
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タイ北部の熱帯季節林における現地観測をベースにした水文気象研究
―既往研究の整理と今後の課題―
田中 延亮久米 朋宣吉藤 奈津子田中 克典瀧澤 英紀白木 克繁小坂 泉タンタシリン チャチャイタンタム ニポン鈴木 雅一
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2007 年 20 巻 4 号 p. 347-361

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抄録
タイ北部の熱帯季節林の水文気象を調べた既往の観測研究情報を整理し,今後の研究課題を検討した.まず,森林生態学分野の文献より,この地域の多様な森林植生を四つの潜在的な森林タイプとそれぞれが人為撹乱されたタイプに分類した.熱収支の季節変化などの水文気象に関する基礎情報は,一部の森林タイプを除いて主要な森林タイプで既に調べられていた.その情報を整理した結果,森林タイプによって乾季の蒸発散量に大きな違いがみられることが,この地域の森林植生における水文気象の大きな特徴であることがわかった.この地域の熱帯季節林にとっての環境変化のリズムは,雨季と乾季という毎年繰り返される季節変化に加えて,降水量やその季節変化の年々変動によって形成される.最近の幾つかの研究事例より,その降水の年々変動に伴って,この地域の熱帯季節林の生理生態が単年の調査からは想定できなかった応答を示すことが報告されてきた.このような森林の生理生態の反応は,この地域の熱帯季節林における熱・水・炭素循環が年々に大きく変化することを示唆する.今後の研究課題として,降水の年々変動に対する各熱帯季節林の反応を明らかにしてゆくことが重要であると考えられた.
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© 2007 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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