水文・水資源学会誌
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河川中流域における土砂の動態が早瀬の物理環境に及ぼす影響
知花 武佳林 融三宅 基文
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2007 年 20 巻 4 号 p. 362-372

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抄録
河川物理環境の改善には,土砂動態の把握が不可欠である.そこで,早瀬内の微生息場が形成される過程を,土砂動態の観点から調べることとした.
解析では,空間スケールの階層性に注目し次の三段階の過程に注目した.まず,土砂供給量が砂州の発達度を決定し早瀬形状が決まる過程,次に早瀬形状が決まり,その内部の水深・流速分布や河床形状が決まる過程,さらに早瀬内部での水理環境が決まった結果,砂の動き方が決まり,多様な河床構造が形成される過程である.
その結果,以下のことが明らかとなった.まず,早瀬形状は供給土砂量が多く発達した砂州から順に,狭窄型,縦長型,横長型となり,それぞれ特徴的な縦横断勾配,水理環境を有している.また,早瀬の河床表層に形成される浮き石は流量の大きな早瀬ほど厚く,形状的には狭窄型が最も多様で厚い浮き石が形成されやすい.さらに,早瀬内部の礫構造は,瀬脇よりも澪筋が,瀬頭よりも瀬尻が,厚い浮き石の層を形成しやすい.ただし砂の流入量は左右岸で異なり,洪水後しばらく砂が流れる瀬脇とそうでない瀬脇ができる.この様な浮き石の形成には数週間の時間を要し,早瀬内の多様な礫構造が徐々に形成されていく.
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© 2007 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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