水文・水資源学会誌
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原著論文
既往概念流出モデルの理論的導出
呉 修一山田 正
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2009 年 22 巻 5 号 p. 386-400

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抄録
本論文は,合理式,貯留関数法,タンクモデルなどの既存流出概念モデルの理論的な導出を行い,概念モデルおよび流出パラメータの物理的意味を明らかにすることを目的としている.Kinematic Wave法に基づき斜面流下方向流れに着目し,流れの抵抗則をマニング則,ダルシー則や飽和・不飽和浸透流で表現するとともに,斜面流下方向流れに対して時々刻々の定常解の仮定,斜面流下方向断面平均流速が斜面流下距離に比例するという仮定を導入することで既往の概念モデルが導出される.これにより,貯留関数法は斜面流下方向流れに対して時々刻々の定常解を仮定した場合に,タンクモデルは斜面流下方向断面平均流速が流下距離に比例すると仮定した場合に,合理式は斜面流下方向流れが飽和ダルシー則,もしくは定常状態とした場合に成立することを明らかにした.また,概念モデルの物理的背景およびその適用条件に対して考察を行うとともに,貯留関数法およびタンクモデル中のパラメータが飽和透水係数,表層土層厚,有効空隙率,土壌の透水性を表すパラメータなどの土壌・地形特性から決定できることを示した.
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© 2009 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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