水文・水資源学会誌
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解説
将来のエネルギー供給変化に対応した水田灌漑システムの展望
丹治 肇小林 慎太郎桐 博英
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2010 年 23 巻 1 号 p. 43-56

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抄録
21世紀のエネルギー状況に対応した水田灌漑システムの再編を検討した.石油ピーク説に見られるように,21世紀には,化石燃料は枯渇する可能性がある.このため,リスク管理として自然エネルギーへの転換が多くの国で図られている.その場合には,日本では太陽光発電が主役になる.このとき,発電量の変動と発電所の分散に対応した電力グリッドの再編が課題である.解決策としてスマートグリッドの概念の提案と技術開発が始まっていて,30年後には完成予定である.そのとき水田灌漑システムも化石燃料に頼らないエネルギー自立性(self subsidence of energy)が求められよう.スマートグリッド技術には,水田灌漑システムの水管理を改善し,現在抱えている問題を解決するポテンシャルがある.このポテンシャルを活用するために,水田灌漑システムは分散型の貯水灌漑システムに再編する必要がある.この新たな水田灌漑システムでは,貯水は,自然エネルギーの発電量の変動を調整する水田灌漑電池システム(PBS: Paddy Battery System)として利用することで,電力ネットワークの一部を形成するであろう.
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© 2010 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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