抄録
流域からの流出は,植生の状態だけでなく地質にも規定されると言われる.このことは,植生変化の流出への影響が,流域の地質によって異なる可能性を示唆する.この可能性を検討するために,地質の異なる2流域において,森林回復が流出に与える影響を調べた.対象とした2流域は,竜の口南谷流域と白坂流域で,地質はそれぞれ付加体堆積岩と花崗岩である.森林回復前後のそれぞれ5年間の流出データに対して指数関数型タンクモデルを適用して,モデルパラメータを森林回復前後のそれぞれについて決定した.竜の口南谷流域では,森林回復による流出に変化が認められたものの,白坂流域ではほとんど認められなかった.このことは,花崗岩地質の白坂流域では,岩盤の亀裂への浸透が存在するため,森林土壌の変化による流出の変化が生じにくいためと思われた.このことから,森林管理による流出の制御可能性を調査・議論するためには,地質を考慮に入れる必要があることが示唆された.