2018 年 31 巻 1 号 p. 17-24
近年,タイ北部に位置するナン県では森林伐採が加速度的に進行しており,水文環境への影響が懸念されている.本研究では,ナン川上流域における1974 年から2015 年までの42 年間の流況曲線と雨況曲線を利用して,それらの歴史的な変化に着目した.その結果,雨況曲線については有意な傾向は認められなかった.しかしながら,低水流量と渇水流量が有意に増加していることがわかった.特に,314 日から351 日の渇水流量は有意水準0.1 %で増加していた.既往研究によると,1995 年から2012 年までの17 年間に,ナン県の森林面積は41.5 %減少し,耕作地面積が51.1 %増加している.このような大規模な土地利用変化が,渇水流量の増加に影響を与えたことが推察される.