大西洋からカナダ多島海の間を縫って太平洋に至る北西航路の初通過に成功したアムンセンの探検や北欧からシベリア沿岸を通る北東航路初通過に成功したノルデンショルドの探検を例にとり,極地での探検心・探求心は学問に通ずるものがあるとした.
世界の地域で水利用可能量の限界に到達しつつある現代,この問題に対処するためには水資源学と水文学の共同活動が必要である.また,日本はその歴史的経験から,この問題に取り組む強みと義務をもつ.
大阪府大阪市を対象として過去の浸水実績から内水氾濫の特性を解明することを目的とした.過去20年間の浸水実績を記録した水害区域図をGISデータベース化し,内水氾濫が過去複数回発生している“内水氾濫頻発区域”を抽出した.次に,“内水氾濫頻発区域”のもつ特性を解析した.解析の結果,地形的に集水が容易な“窪地”では優先的に下水道の整備が行われており,抽出された内水氾濫頻発区域は“窪地”よりも“平地”に分布する傾向があることが明らかとなった.さらに,内水氾濫頻発区域の特性として,周囲よりも傾斜,標高が小さい地点に分布する傾向があること,道路や鉄道などの地表面流及び下水道を分断する構造物付近に分布する傾向があること,付近に小・中学校が位置しているケースが多いことが定量的に示された.
近年,タイ北部に位置するナン県では森林伐採が加速度的に進行しており,水文環境への影響が懸念されている.本研究では,ナン川上流域における1974 年から2015 年までの42 年間の流況曲線と雨況曲線を利用して,それらの歴史的な変化に着目した.その結果,雨況曲線については有意な傾向は認められなかった.しかしながら,低水流量と渇水流量が有意に増加していることがわかった.特に,314 日から351 日の渇水流量は有意水準0.1 %で増加していた.既往研究によると,1995 年から2012 年までの17 年間に,ナン県の森林面積は41.5 %減少し,耕作地面積が51.1 %増加している.このような大規模な土地利用変化が,渇水流量の増加に影響を与えたことが推察される.
2014年に発足した水関連の若手研究者コミュニティ(Water-Associated Communitytoward Collaborative Achievements, WACCA)では,毎回異なるテーマを設定し,若手研究者間の交流・共同研究の場を提供することを目的に討論会や現地見学会を実施してきた. 本稿では第7回目となるWACCA07の活動を報告する.WACCA07では研究手法に着目した討論会および現場見学会を実施した.現地見学会では,広島市を流れる太田川放水路での底泥採取を見学,体験した.
討論会では,参加者による自由な議論の結果,研究分野の特徴の違いを研究手法という切り口から理解することができ,また現実の研究生活の中での研究手法の選択について,その流れや歴史的な経緯などについて議論することができた.現地見学会では,広島市を流れる太田川放水路での底質採取の見学・体験をとおして,多くの参加者が対象とする空間スケールに比べて非常に小さい空間スケールでの観測値の空間変動性を体感することができた.また,観測後の室内実験や解析に耐えうる試料を採取することの難しさも実感した.