水文・水資源学会誌
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総説
地理分野からみたこの30年間の水文・水資源学に関するレビューと展望
松山 洋
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2018 年 31 巻 6 号 p. 467-486

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抄録

 この30年間,地理学者が水文・水資源学会誌に公表してきた種別Aの原稿(以下「論文」)について概観し,21世紀当初挙げられた「2020年頃までに解決すべき問題」に対して,地理学者がどのように貢献してきたかについて述べた.「地理学者による論文」を,“公表時に,地理学関係の機関に属していた方たちが全著者数の1/2以上を占める「論文」”と定義したところ全体の約9 %を占め,2005年にピークがみられた.2005年には,研究ノートと原著論文の寄与が等しいことが特徴であった.研究対象地域は,国外ではアジア,国内ではつくばと東京周辺が多かった.多く挙げられたキーワードは,リモートセンシング(7回),NDVI,安定同位体,季節変化,降水,植生指標,積雪水当量(各4回)であった.1990年代はデータ解析の「論文」(含レビュー)が多かったが,2000年代後半にかけて観測の「論文」が多くなっていく傾向がみられた.2010年代は2000年代前半同様,観測とデータ解析の「論文」が同数になっていた.2020年頃までに解決すべき問題に関して,地理学者はHydrological Research Lettersの編集,観測データベースの整備,水文プロセスの発見,国際共同研究の推進,水文学の教科書執筆,など目に見える形で貢献してきた.

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© 2018 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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