水文・水資源学会誌
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技術・調査報告
東京における気温季節区分と長期変動
岩本 英之沖 大幹
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2019 年 32 巻 4 号 p. 182-188

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抄録

 近年の気候変動に伴い,気温上昇という長期変化傾向は報告されているが,一方で季節区分の構造は果たして変化しているのだろうか?本報告では東京を対象に,気温の絶対値に依存しない新しい手法により各年の季節区分を行った結果と,その長期変動について紹介する.冬・春・初夏・夏・晩夏・秋の6季節からなり,階段状に気温変化が起きたと見なせる日を開始期日とする「気温季節」を,気候学的な季節区分から気温の側面のみを取り出したものとして定義した.各季節内で気温が一定であるとする統計モデルを1年間の気温推移に対して当てはめ,総残差二乗和を最小とする開始期日の組み合わせを採用するという手法で気温季節を客観的に決定した.気温季節区分は,気温以外の側面も考慮した従来の気圧配置型による季節区分とは明らかに異なった.1964年から2013年までの50年間の気温季節区分の開始期日・季節の長さの長期変動を求めると,晩夏の開始期日が遅れるとともに夏の長さが長期化していることが示された.平均的な気温上昇に影響を受けない気温季節区分において長期変化傾向が表れており,東京の季節構造が変化していることが示唆された.

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© 2019 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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