水文・水資源学会誌
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原著論文
グローバル河川氾濫モデル出力の日本国内ハザードマップとしての利用可能性の検証
北 祐樹山崎 大
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ジャーナル オープンアクセス

2022 年 35 巻 4 号 p. 267-278

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抄録

 国や自治体が整備する洪水ハザードマップは広く利用される一方で,水系ごとに洪水ハザードマップを個別作成することの大きな時間とコストが課題である.本研究では,グローバル河川氾濫モデルCaMa-Floodによる広域シミュレーション出力から日本の1,000年確率規模の想定浸水域を作成し,公的なハザードマップと比較することで,モデル出力をハザードマップとして活用する可能性を議論する.再解析流出量を入力としてCaMa-Floodで計算した水位を極値解析して1,000年確率規模の水位を得,高解像度の地形データでダウンスケールして想定浸水域図を作成した.得られた想定浸水域を公的ハザードマップと比較すると,バックウォーターによる浸水や分岐河道での浸水域が概ね表現されていた.一方で,上流からの越水や集水域境界を跨いだ流れで生じる浸水が一部表現されないという課題が確認され,CaMa-Floodで作成した想定浸水域内に含まれる人口は公的なハザードマップに比べ29 %少なかった.グローバル河川氾濫モデル出力が洪水ハザードマップとして一定の精度を持つことを確認し,ローカルな洪水リスク評価への活用などの可能性を示した.

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© 2022 Japan Society of Hydrology and Water Resources
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