抄録
大気の流動モデルの手法にビルや森林キャノピーの影響を組み込み,街区スケール内の気温・風速分布を計算する数値モデルを作成した.モデルの検証として,さまざまなキャノピーの条件下で計算を行い,それぞれのキャノピー内外の微気象特性をよく表現した.特に,キャノピー内の地表面温度や,ビルの表面の分布特性は,建物や森林の密度に大きく依存し,従来の粗度による取り扱いでの分布と比べてより現実的な分布を得た.さらに,1つの地域を対象に計算を行い,モデルの精度の確認を行った.結果は概ね合理的なものであり,観測値ともよく一致した.本モデルは,これまで最も困難とされてきた数km程度のスケールの住宅地域,市街地の熱環境分布の予測を可能にし,様々な場所での利用が期待される.