抄録
中国・九連山流域の流出特性を数値的に評価するため,九連山流域で観測された降雨に対する流出応答へ水循環モデル(HYCYMODEL)を適用した.本モデルにおける流域パラメータは試行錯誤によって決定された.月毎の可能蒸散量は観測された気温,湿度および,日射量よりPriestly-Taylor式を用いて算出された.HYCYMODELを用いてシミュレートした降雨に対する流出応答は,観測された流出量によく一致した.更に,それらの流域定数および,降雨に対する流出応答のシミュレーションの結果を解析し,平均的な日本国内の温帯林流域について報告されているものとの比較を行った.九連山流域では,流域に占める不浸透部分の割合が小さく,水の可能貯留量が大きい.このため,全流出量に占める基底流出量の比率は,日本国内の流域におけるものと同様であるが,ハイドログラフの曲線は異なっていた.九連山流域では,流出のピークが小さく,流出の減衰は緩やかであった.