水文・水資源学会誌
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世界の諸河川の年流出高の変動特性と地域間相関
吉野 文雄
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1999 年 12 巻 2 号 p. 109-120

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抄録

この報告は,地球上の108河川,161観測所の流出量のデータを用いて,諸河川の流出量の相関関係や長期的な変動傾向を調べ,気候変化の影響や地球規模でのテレコネクション関係が河川流出量のデータにおいて認められるのかどうかを調べたものである.その結果,テレコネクション関係はこの解析では明確に判断できなかったが,1) 1960年代以降の30年間にそれ以前の30年間に比べて流出高が増大する傾向の河川と,減少する傾向の河川が見られている.サヘル地域に隣接する河川の年流出高は1960年代以降減少傾向にある.また,Rhine川,Wisla川,北米のMississippi川上流,Mis-souri川等では1960年代以降年流出高が増大しているようである.このことが気候温暖化による影響かどうかはこの解析では判断できない.2) アフリカやインド,アメリカの乾燥地域を流域にもつ河川では,1960年代以降,それ以前の期間に比べ変動係数(=標準偏差/年平均流出高)が増大している.3) 長期間の年流出高の変動係数と平均流出高の関係は,流域面積が大きくなる程また平均流出高が大きくなる程変動係数が小さくなるという一般的な傾向を示している.4) 161観測所の全てを用いた各2観測所間の相関係数表から,河川間での年流出高の相関は低く,一般的には無相関とみなせる.ただし,同一河川の上下流の観測所間では相関係数が0.9以上の関係を持つこと,隣接した河川流域では,年流出高の相関係数は良くても0.7程度である.等が明らかにされた.

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