水文・水資源学会誌
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鳴門海峡周辺沖積農地の地下水塩類挙動に関する事例研究
カマル モハマッド サイドゥザマン天谷 孝夫
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2002 年 15 巻 2 号 p. 176-186

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抄録

我が国沖積地帯は古くから優良な農業地帯であったが,元来が低平地帯であるため排水問題や水質汚濁問題等に苦慮してきた.近時の経済発展はこれら諸問題をさらに加速させる方向にあり,厳しさを増す水需給関係は農業関連用水の削減を迫り続けている.その結果,沿海部において下層部へ侵入した高濃度塩水の表土層への上昇を巧妙に抑止していた従来の水秩序が崩れ,塩害の危険性が増大している.本報告は,鳴門海峡に近い2カ所の調査地において,感潮河川の影響を受ける地下部の塩類挙動を精査し,安定的な農業生産の維持に必要な方策を提起するための事例とすることを目的とした.すなわち,淡路島西淡町の孫田川改修事業においては,河口より600m付近まで見られる塩水挙動の影響を配慮し,上下方向の土層秩序を乱さない施工方法の工夫が必要であること,また吉野川河口の川内地区では新たな清水導入効果を上げるため,従来の除塩用水を含めた量の水を地域管理用水として配水できる,高度な対応策が必要であることを示した.

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