水文・水資源学会誌
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炭素安定同位体比を用いた暖温帯性常緑広葉樹の水利用効率に関する解析
松尾 奈緒子小杉 緑子大手 信人木庭 啓介
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2002 年 15 巻 3 号 p. 229-242

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抄録

森林群落上におけるH2O・CO2フラックスの長期推定を行う際に重要となる樹木個葉によるガス交換制御に関する情報を提供することを目的とし,兵庫県赤穂市人工樹林帯に生育する5種の暖温帯性常緑広葉樹を対象として葉と周辺大気CO2の炭素安定同位体比を測定し, Farquhar et al. (1989)の炭素安定同位体分別モデルを用いて長期平均的な細胞間隙と大気のCO2濃度比(Ci/Ca iso.)を算出した.その結果,上層成熟葉のCi/Ca iso.は樹種間差が小さく,様々な気候区に生育する樹木の文献値と比較すると暖温帯性気候区に生育する樹木と近い値であることが示された.また,対象木下層葉は上層葉よりも受光量が小さいことに起因してCi/Ca iso.が大きかった.上層葉のCi/Ca iso.は展開直後に最小値をとり,夏に上昇するという季節変化を示した.したがって,樹林のガス交換量推定のパラメータとしてCi/Ca iso.を用いる際には,その空間分布や季節変動を考慮する必要がある.

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