抄録
農業流域で融雪期ほぼ全期間にわたる水質調査を行った.河川水質のN,P,SSおよび主要イオン濃度連続データについて主成分分析し,水質変動を3主成分に統合した.湧水と表面流去水水質から,これら3主成分は,水質成分が河川に流出する際における流出形態(溶存態/懸濁態)と流出経路(地表面/地下)を表すと解釈できた.すなわち,第1主成分が地表面経路による溶存態成分の流出,第2主成分が高流量時における懸濁態成分の流出,第3主成分が地下経路による溶存態成分の流出を示すと考えられた.求められた主成分のうち,とくに第1,第3主成分の性質は,農業的土地利用が高度に進んでいること,河川間際まで農地が広がり河川周辺に畜舎が存在することなど,流域の農業活動を密接に反映していた.