水収支を求めることは,水文諸要素間の関係を明らかにすることであり,個別に観測した水文データは,各流域ごとに水収支を通じてその意味と特性を明確に規定することが出来る.本論文では,わが国における河川流域に一般的に適用可能な月単位の水収支モデルを開発し,30年間にわたる水収支を全国の主要河川毎に計算し,その時系列データに基づき,水資源の変動性を明らかにすると共に,降水観測データの割増し率,積雪・融雪と流域平均気温との関係,積雪面積と積雪賦存水量の関係,流域の地質的条件とタンクモデル法による流出モデルのタイプの分類,蒸発散量の評価等,各地流域の水文特性を明らかにした.ここで得られた成果は,全国的な水文特性の相互比較に巨視的視点を与えるとともに,地域的な水資源の賦存量の評価や管理に対して,不可欠なデータを与えるものである.