一雨の降雨の水質時間変化は,降り出してからある時点までの雨の総量,つまり累加雨量と,その時点での降雨強度との二つの因子のうち,いずれか一つの因子のみでは説明できない.本論文は,雨滴径分布関教を用い,累加雨量,降雨強度,両者の影響を統合すれば,降雨水質の時間変化を簡単な式で表現できることを示した.解析は,降雨水のpH,電気伝導度,およびNO3-N濃度に相当する紫外部吸光度の観測データを対象とした.雨滴径分布の確率密度関数,雨滴の落下速度,雨滴の水質について種々の仮定を行い,それぞれの仮定で水質変化を検討した. 本研究の結果,電気伝導度,紫外部吸光度に与える降雨強度の影響はそのときの雨滴径分布を用いて推定でき,累加雨量の影響は,雨滴径分布からえられる推定負荷量関数と実際の負荷量との比が累加雨量の一次関数となると仮定することで説明できた.また,種々の仮定の中で最も説明力が大きかったのは,雨滴径分布が指数分布で,雨滴落下速度は雨滴径に比例し,雨滴の濃度が雨滴の単位体積当りの表面積に比例し,落下速度に反比例すると仮定した場合であった.
抄録全体を表示