水文・水資源学会誌
Online ISSN : 1349-2853
Print ISSN : 0915-1389
ISSN-L : 0915-1389
温度勾配による土壌中の水蒸気移動の運動論的機構について
小林 哲夫
著者情報
ジャーナル フリー

1995 年 8 巻 1 号 p. 79-83

詳細
抄録

温度勾配による土壌中の水蒸気移動機構に関するPhilipとdeVries(1957)のモデルが批判的に考察される.その後の実験結果は彼らのモデルが必ずしも満足できるものでないことを示しているが,それに代わるモデルは現在までのところ提出されていない.本報では,土壌間隙の寸法は空気分子の平均自由行程に比較して十分には大きくなく,したがって気体分子運動論的水蒸気移動機構を無視できないことが指摘される.また平均的な土壌間隙内では,拡散支配と運動論的支配の水蒸気移動機構がほぼ拮抗しており,実際には両者の中間的機構が作動していることが示される.運動論的機構の推進力は温度勾配に起因する気相と液(吸着)相間の平衡からのずれである.本機構を考慮することにより,従来の実験結果の特徴は矛盾なく説明できる.

著者関連情報
© 水文・水資源学会
前の記事 次の記事
feedback
Top