ダムや頭首工,湧水池,溜池,井戸などの水源(あるいは取水施設)を有する水田地域では,各水源からいかに潅漑用水を取水するかということが,用水管理上の問題となる.本論では,愛知川扇状地を事例として,現在の潅漑計画および新計画の下での,こうした水源からの期別取水量を決定した.その決定には線形計画法を用い,全潅漑用水の費用を最小にすることを考えた.得られた値(水源別最適取水量)については,実績の取水量と比較した.また,簡単な水収支をもとに,最適取水を行った場合の地下水貯留量を推定した. その結果,地下水には水価だけでは評価できない利点があること,現在のダムによる用水利用量は1億3,000万m3程度が限界であることが示唆された.さらに,現計画での最適取水条件下では,潅漑期間に水田から地下水体に涵養された水量6,200~6,300万m3のうち65%が流出し,30%が潅漑終了時に貯留されている結果となった.
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