北海道の最北部に位置するサロベツ泥炭地では,酪農業が地域の基幹産業として成長し,造成された大規模な牧草畑が地域経済を支える重要な飼料生産基盤となっている。一方,地域では日本の代表的な泥炭地湿地であるサロベツ湿原が国立公園に指定されており,湿原と農業の共生が課題となっている。このため,地域と事業者が一体となって農地の排水機能の確保と湿原の保全に必要な地下水位の維持を目的として,農地と湿原の隣接箇所に緩衝帯を設置する取組みを行っている。本報では,この取組みの検証を目的として設置された実証試験地での地下水位や植生などのモニタリング状況を2006年の報告に続き紹介する。