国内食料供給能力に対する国民の不安の高まりを背景として,2015年3月に閣議決定された食料・農業・農村基本計画では,従来の食料自給率に加えて,わが国の農林水産業が有する食料の潜在的な生産能力を示す「食料自給力指標」が初めて公表された。本報では,熊本県内で有数の農業水利施設を誇る八代平野を事例に,水稲栽培における農業水利施設の寄与を評価した。地域の気象条件を考慮した水稲収量の推定モデルを用いて,八代平野の水稲生産を評価した結果,農業水利施設は平均的に水稲収量のおよそ60%を支えることが示された。特に,灌漑期間の日照時間が多い場合,水稲単収の増加とともに水稲収量の増加が期待されるが,同時に農業水利施設による灌漑の必要性も増加することが示された。