抄録
本研究は,日本における大学と金融機関の連携のこの5年間の変化を明らかにするものである.産学連携において,近年,金融機関が産と学の橋渡し機能を果たすことが期待されてきている.一方で,地域金融機関をめぐる環境は大きく変化し,このことが大学と金融機関の連携に少なからず影響を及ぼすことが考えられる.このため,著者たちのグループは2014年に全国アンケート調査を実施し,その結果を2009年時の調査結果と比較した.
調査分析の結果,高い割合でリエゾン機関を有する国立大学法人と地域金融機関の間で連携が継続されていることが確認された.また,国立大学法人はリエゾン活動により関心を集中する傾向にあること,一方で,金融機関をめぐる環境の変化は,特に地方銀行の意識に変化を及ぼし,地方銀行は「顧客満足」,「預金高・貸付高への貢献」,「職員のスキルアップ」など,本務に直接寄与する具体的成果を大学等との連携に求める傾向があることなどが明らかとなった.