抄録
産学官連携活動実績は,個々の教員の社会貢献活動や各大学の組織的活動によって積み上げられてきた.国立大学の法人化の時期以後から,共同研究や特許出願において量的な拡大があった.これまで,産学官連携活動実績に関する分析はいくつかあるが,産学官連携活動実績に影響を与える指標の総括的分析は見当たらない.
本稿では,産学官連携活動実績を被説明(従属)変数として,大学や地域の特性の関係を分析した.大学の特性に関しては研究力や潜在力,地域社会の特性に関しては大学が立地する都道府県の産業力と潜在力を説明(独立)変数とした.ここで,産学官連携活動実績を象徴する指標として,産業界と大学の連携を比較的短期的に反映すると考えられる共同研究受入額を用いている.
その結果,産学官連携活動実績は,国立大学全体を見ると,大規模大学の特性が全体に現れ,大規模大学では研究力で説明でき,中規模大学では地域の産業力で説明できることが分かった.従って,産学官連携活動を推進するモデルは,大規模大学では研究力に,中規模大学では地域の産業力に関係する要素で推進されている異なるモデルとなっている.