2022 年 18 巻 2 号 p. 2_32-2_41
本研究は,アメリカ競争力評議会(Council on Competitiveness)に提示される枠組みに基づき,地域の成長産業に対する大学等の産学連携の波及効果を測定し,貢献する要素を特定することを目的としている.研究方法としては,大学等の産学連携の実績をインプット指標にし,大学等が所在する都道府県のIT産業,バイオテクノロジー産業などの指標を「知的資源の創造」「知的資源の開発」「生産性の向上」「繁栄」という4つのカテゴリーにわけてアウトプット指標にして,両者の関係について重回帰分析を行った.分析の結果,産学連携の規模全体がまだ小さく,地域経済に対する直接的な刺激効果は限定的であるにもかかわらず,大学等のインプットが特定の産業への発展や起業意欲の向上に貢献することにより,地域の知的資源創造及び知的資源の開発を促進する効果が確認された.また,大学等の産学連携活動が地域の成長産業の生産性向上や地域の繁栄への成長産業の寄与に対しては,プラスとマイナス両方の影響が裏付けられた.