2008 年 4 巻 2 号 p. 2_25-2_33
1995年に議員立法による『科学技術基本法』が制定された結果,経済産業省(旧通商産業省)において地域コンソーシアム研究開発制度が設立された.この制度はわが国における各地域のイノベーションを促進し,地域の産業クラスター政策と関連させて地域産業の自律的発展を支援する制度である.本稿は,バブル経済の崩壊後の経済情勢との関連で誕生した地域コンソーシアム研究開発制度の法律制定の経緯を調査し,特に中国地域における産業技術を支援してきた地域コンソーシアム研究開発制度の意義について考察した.その結果,山陽地方と山陰地方の両地方において地域コンソーシアム制度による研究開発の成功事例が見出され,地域コンソーシアム研究開発制度が中国地域全体として意味あるものであることが明らかになった.さらに,この制度を活用した成功事例について,その要因について分析し,成功事例をもたらすためには企業側がその分野における研究開発動向を正確に把握しており,しかもプロジェクト終了後も粘り強く製品化を図る強い意思を持っていること,また,プロジェクトの推進者には強力なリーダーシップが求められることを明らかにした.