2008 年 4 巻 2 号 p. 2_34-2_43
現用されているリチウム二次電池は1991年,それまでの長い間の産学関係者による研究開発が稔って実用化されたので,当時の専門学会である電気化学協会における20年間に亙る研究発表状況等から開発の経緯を調査,検討し,本開発の特質を考察した.(1)電源として使用されるポータブル電子機器が次々と新しく生れ,開発の推進力であるニーズが極めて長期間に亙り持続した,(2)学理的に新規で,「学」に相応しい,異質の非常に多くの課題を提供し続け,多くの「学」の参入を促した,(3)各種電池を開発・実用化してきた電池企業(グループ)の開発力,技術力が,基礎的に未解決な課題を克服し,発想の転換を含む実用電池に仕上げた,(4)リチウム一次電池の場合にみられた「個別的な産学連携」よりは,オープン・コミュニティである学会,特に電池技術委員会における活発な情報交換が,情報を共有して,関係者間の協調と競争を促し,企業の製品化に貢献した,これらのことが本開発の特質といえる.これらの認識と応用は今後の産学連携による新産業創出にも有用である.