2022 年 104 巻 2 号 p. 24-35
本研究の目的は,社会等における問題発見や目的設定から,立案した解決策を実行し,その結果を評価し,必要であればさらに改善することまでを含む,一連の「社会的実践プロセス」を志向した授業の,小学校における実現可能性と課題を明らかにすることである.そのために,コロナ禍における分散下校の改善案について考える授業を構想した.児童らは,下駄箱や正門で密になることを問題として捉え,その現状把握をするために必要なデータを特定し,収集方法を決定した.そして,収集したデータを分析し解決策を立案するとともに,それを試行し,その結果を評価することで改善案を見いだすことができた.また,収集したデータを根拠にして合意形成をしたり,解決策の試行を経て自ずと改善策を考えようとしたりする姿も見られた.このような点から,小学校においても「社会的実践プロセス」を経験させる授業が可能であると考えられる.一方で,課題としては一連のプロセスを遂行するための時間の確保と,初めて出会うグラフやシミュレーションを全ての児童がその場で使えるようにするための手立てが挙げられる.