日本看護研究学会雑誌
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外転枕使用による側臥位時の体圧と安楽に関する一考察
葛西 敦子山形 賀津子木村 紀美花田 久美子米内山 千賀子福島 松郎
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1991 年 14 巻 2 号 p. 2_37-2_51

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抄録
 外転枕は,股関節疾患患者の術後において,術後合併症である股関節脱臼予防のため,股関節外転位保持の目的で使用され,そのまま側臥位に変換できる利点をもつ。そこで,健常者70名と股関節手術患者4名を対象に,外転枕使用時の側臥位における安楽を,体圧・側臥位持続による自覚的訴え・心理テストの面から検討した。
 体圧は,90度側臥位と安楽な角度で安楽物品使用時の2法において,肩峰部・肩甲部・上腕部・第7肋骨部・腸骨稜部・上後腸骨棘部・大転子部・大腿部・腓骨頭部・腓腹部,外果部・踵部の12か所で,カフ内在測定器を使用し測定した。
 1. 90度側臥位時の体圧は,健常者では肩峰部・大転子部・腸骨稜部・第7肋骨部・外果部・腓骨頭部・腓腹部において毛細血管圧(32mmHg)以上であり,患者の体圧も差はなかった。
 2. 安楽と感じた側臥位の角度は健常者60.1±1.2度,患者60.7±1.2度であった。
 3. 安楽な角度で安楽物品使用時の体圧は,90度側臥位と比較し,いずれの部位においても有意な低下がみられたが,上後腸骨棘部・大転子部・肩甲部においては依然32mmHgであった。
 4. 側臥位持続による自覚的訴え数は,健常者の方が患者より有意に多かった。側臥位開始から最初の訴えがあるまでの時間は,患者の方が健常者より有意に遅かった。
 5. 自覚的訴えと心理テストとの関連性は認められなかった。
 6. 自覚的訴えは,健常者では高体圧部位の上後腸骨棘部・大転子部・肩甲部の圧迫痛が多く,苦痛部位と高体圧部位は一致した。しかし,患者では高体圧部位の訴えはなく,患側の倦怠感や創痛が主であり,個々の訴えに合わせた安楽の工夫が必要と考えた。
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© 1991 一般社団法人 日本看護研究学会
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