抄録
看護教育を受けることによって看護学生の「病人観」にどのような変容がもたらされるかを明らかにする一連の研究の中で,本研究では,「糖尿病患者」・「癌患者」・「精神分裂病患者」を取り上げ,それぞれについて,その「病気」のイメージ,また,その「病気」を患っている「病人」のイメージを調査した。
対象は入学後間もない看護系短期大学の1年生78名と臨床実習までを修了した3年生73名,比較対照群として同年齢の看護・医学系ではない大学の1年生72名と3・4年生50名の計273名であった。
調査の結果,以下の結論を得た。
1) 「病人」についてのみた経験を有する学生は医短3年群が最も多く,病人は主に入院患者であった。「精神分裂病患者」についてのみた経験を有する学生は,医短3年群以外ではきわめて少ない。
2) 「病気」に対するイメージについて,「糖尿病」では1年生の2群は楽観的であったが,医短3年群では最もネガティブであった。「癌」では,全体的にネガティブであったが,医短3年群は他の3年群に比べてそれほどネガティブな見方ではなかった。
「精神分裂病」では,大・医短群とも3年生の2群は1年生の2群よりネガティブであったが,医短3年群では大3・4年群よりはネガティブな見方ではなかった。
3) 「病人」に対するイメージは,「糖尿病患者」・「癌患者」・「精神分裂病患者」のいずれに対しても医短3年群では他の3群に比べて最も好意的・肯定的であった。
4) 学生の「病人」に対するイメージの因子構造は,「糖尿病患者」と「癌患者」に対しては「肯定性」・「活力」・「対人印象」・「安定性」・「現実性」の5因子で,「精神分裂病患者」に対しては,「肯定性」・「快活性」・「鋭敏性」・「活力」・「安定性」の5因子で構成されていた。
5) 因子得点は,医短3年群では「糖尿病患者」と「癌患者」に対しては「肯定性」・「活力」の2因子で,他の3群よりも有意に高く,「精神分裂病患者」に対しては「肯定性」・「快活性」で他の3群より有意に高かったが,「活力」で大3・4年群・医短1年群より有意に低かった。