2003 年 26 巻 5 号 p. 5_31-5_44
精神障害の中でも重篤とされる精神分裂病者にとっての生きられた入院体験を明らかにすることを目的に,入院体験のある精神科外来に通院中の精神分裂病者8名を対象に半構成的面接を行った。 録音後逐語録に転記した面接内容を Giorgi の現象学的アプローチを用いて分析した結果,258場面が抽出され,19カテゴリーに分類された。 精神分裂病者の生きられた入院体験は,1) 誰にも理解してもらえない苦しみとしての病い体験,2) 社会的存在の時間と場の喪失体験,3) <させられている>体験と感じる日常生活,4) 日常性のなかに新たな意味を発見する体験,5) 同類意識と他者に理解されていない孤独感の混じる他者との関係,として意味づけることができる。 そして,こうした入院体験全体の根底には深い孤独感が横たわっていると思われる。