2023 年 43 巻 1_2 号 p. 112-118
症例は79歳女性,検診で胸部異常陰影を指摘され来院した.発熱,腹部膨満感も認めていた.腹部CTで虫垂の腫脹,周囲脂肪織濃度の上昇とリンパ節腫大を認めた.急性虫垂炎を疑い,抗菌薬の点滴投与で症状は軽快したが,約1カ月後のCTでは虫垂の壁肥厚が増強し,虫垂腫瘍疑いで腹腔鏡下手術を施行した.腹腔内は腹腔腸管漿膜全面にわたり1 mm程度の粟粒性の播種性病変で覆い尽くされていた.虫垂には炎症性の変化や腫瘍を疑う所見は認めなかった.腹膜の播種性病変の生検にて非乾酪性の類上皮肉芽腫を認め,腹膜サルコイドーシスと診断した.約半年後に出現した両下腿の皮下結節から類上皮多核巨細胞を認め,皮膚サルコイドーシスの合併も認めた.約1年後に急性虫垂炎で施行した腹腔鏡下手術では,腹腔内の粟粒性の播種性病変は肉眼的に消失しており,腹膜サルコイドーシスの腹腔内所見は自然軽快していた.腹腔内所見の肉眼的改善を観察し得た腹膜サルコイドーシスは稀であり報告する.