日本サルコイドーシス/肉芽腫性疾患学会雑誌
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43 巻, 1_2 号
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追悼文
グラニュローマ―サルコイドーシス研究を支えた人々―
学会賞論文
  • 玉田 勉
    原稿種別: 研究論文
    2023 年43 巻1_2 号 p. 15-21
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/12/15
    ジャーナル フリー

    サルコイドーシスは多くの臓器・組織に異時性に肉芽腫を形成し得ること,またそれらが自然寛解し得ることなどの特徴がある.サルコイドーシスの多様な病態の理解には多臓器病変の管理,つまり他科との連携が必須である.本研究は,(1)多様な臓器病変を有する複数の症例から学ぶサルコイドーシス病態の新たな側面,(2)新規サルコイドーシス診断症例のデータ集積から明らかとなる臨床像の変化,(3)新しい手法を用いた探索的研究から得られる新規予後予測マーカーの開発,など多角的な側面からの検討により,サルコイドーシスの未知の病態に迫ることを目指したものである.

総説
  • 桑原 宏一郎
    原稿種別: 総説
    2023 年43 巻1_2 号 p. 22-25
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/12/15
    ジャーナル フリー

    心臓サルコイドーシスは,サルコイドーシスにおいてその予後を規定する重要な因子である.その診断に関しては,近年の診断指針の策定や画像診断技術の進歩などにより,より早期に診断がなされるようになってきている.治療についても,ステロイドを中心とした免疫抑制療法に加え,心不全や不整脈に対する薬物・非薬物療法の進歩が認められ,その予後は以前に比し改善してきているものと思われる.一方でいまだ重症不整脈や心不全などの心イベントリスクは高く,より一層の診断法,治療法の進歩が望まれる.

  • 小板橋 俊美
    原稿種別: 総説
    2023 年43 巻1_2 号 p. 26-31
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/12/15
    ジャーナル フリー

    心エコー図検査は,心臓形態および機能の評価,血行動態指標の推定が可能で,心疾患診療には必須のツールである.また,非侵襲的検査であり,誰もが気軽にオーダーできる.しかし,得られる情報の信頼性や正確性は検者や被検者の条件に大きく影響を受け,心エコー図レポートを鵜呑みにすると病態や診断を見誤る危険がある.サルコイドーシス診療においては,心病変が予後と治療方針を左右する.心エコー図検査を適切に診療に活かすには,その特性を熟知しピットフォールを知ることが重要である.

  • 真鍋 徳子, 佐野 ひろみ, 真鍋 治
    原稿種別: 総説
    2023 年43 巻1_2 号 p. 32-34
    発行日: 2023年
    公開日: 2023/12/15
    ジャーナル フリー

    欧米に比して日本では心臓サルコイドーシス合併はまれではなく,心臓サルコイドーシスによる臨床症状は,無症候性から胸痛,呼吸困難,失神,動悸,心臓突然死まで様々であるため,まずは心臓病変の合併を疑うことが重要である.心房性および心室性不整脈などの伝導障害や心不全を引き起こす可能性があるため,サルコイドーシスと診断された患者は,問診,心電図検査(ECG)などを含めた心臓病変のスクリーニングを受けることが推奨されている.2016年に心臓限局性心臓サルコイドーシス診断の手引きを含むガイドライン(JMHW/JSSOG 2015)が報告されているが,遅延造影MRI像の有無は診断基準の主項目の1つである.近年心臓MRIは遅延造影像に加えて,心筋障害や心筋炎症の定量的評価指標としてmapping画像の撮影が可能となっている.本稿では,遅延造影MRIを含めた心臓MRIの心臓サルコイドーシス診療における有用性について紹介する.

  • 真鍋 治, 相川 忠夫, 大石 茉耶, 髙橋 慶子, 髙橋 弘昌, 杉﨑 健一, 高橋 秀紀, 真鍋 徳子
    原稿種別: 総説
    2023 年43 巻1_2 号 p. 35-38
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/12/15
    ジャーナル フリー

    サルコイドーシスは全身性肉芽腫性疾患で,いまだ原因不明の疾患である.サルコイドーシス病変は多臓器に分布して様々な臨床症状を来すが,なかでも心臓病変は大きな予後規定因子となるために早期発見が望まれる.FDG PETは2012年4月から心臓サルコイドーシスの炎症部位診断として保険適用となった.FDGはグルコースの類似体であり,炎症を伴う非乾酪性類上皮細胞肉芽腫に強い集積を認めるために活動性を評価でき,現在では心臓サルコイドーシスの診療に欠かせない検査となっている.今回は我々の経験を踏まえて,心臓サルコイドーシス診療におけるFDG PETの原理,評価方法,役割についてまとめる.

  • MRに対する介入とLVAD・心臓移植
    中村 牧子
    原稿種別: 総説
    2023 年43 巻1_2 号 p. 39-43
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/12/15
    ジャーナル フリー

    心サルコイドーシスによる重症心不全では,低用量のステロイドで活動性が制御され,他臓器病変が長期予後を規定しない例は,心臓移植の適応となる場合がある.しかしわが国における心臓移植の待機期間は年々長期化し現在約5年であり,現実的には植込型補助人工心臓(LVAD)治療を経ての移植となる.米国ではLVAD/心移植を受けた心サルコイドーシス患者の予後は,非サルコイドーシス例と同等であったと報告されている.なおLVAD補助中は,ドライブライン皮膚貫通部感染のリスクもあるため,ステロイド投与に関しては一定の見解が得られていない.また心サルコイドーシスに僧帽弁逆流(MR)の合併は多く,至適薬物療法に不応の重度MRを有する例には,MRへの介入が検討される.僧帽弁置換術/形成術で心不全が改善した例も報告されているが,高齢者や低心機能例には,経皮的僧帽弁接合不全修復術が有効である可能性がある.

  • 四十坊 典晴
    原稿種別: 総説
    2023 年43 巻1_2 号 p. 44-47
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/12/15
    ジャーナル フリー

    サルコイドーシスは原因不明の全身性肉芽腫性疾患で,肺病変がしばしば認められる.肺病変が急速に進行する場合,肺病変が一時的に出現し,自然寛解する場合,慢性に経過し,ほとんど進行を認めない場合や呼吸機能障害を呈する場合など,非常に多様な臨床経過が報告されている.進行性の肺サルコイドーシスではステロイド治療が適応となるが,その判断は非常に難しい.進行性の肺サルコイドーシスの経過観察の重要性,吸入ステロイド薬(適応外使用),低用量経口ステロイド薬,中用量経口ステロイド薬の治療,免疫抑制薬の併用に関して解説する.

  • 永井 利幸
    原稿種別: 総説
    2023 年43 巻1_2 号 p. 48-52
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/12/15
    ジャーナル フリー

    心臓サルコイドーシス(心サ症)に対する治療の基本は,免疫抑制療法による心筋組織炎症の抑制であり,本邦では,保険適用を有するステロイド薬を第一選択として用いる.しかしながら,免疫抑制療法の施行下にもかかわらず,進行性の心機能低下,致死性不整脈,心不全増悪あるいは18F-fluorodeoxyglucose positron emission tomography(FDG PET)における心筋炎症所見の再燃が認められる場合がある.その場合,ステロイド薬の増量を考慮するが,増量プロトコルに関するエビデンスは乏しい.その上,FDG PET所見をガイドとしたステロイド投与量の調整に関して懐疑的な報告も近年散見されており,病勢を正確に反映するバイオマーカーの同定・開発が期待される.また,心サ症に対するステロイド代替療法として少量のメトトレキサート(MTX)を用いることがあるものの,有効性・安全性に関するエビデンスは極めて乏しい.現在心サ症に対するMTXの効果を検証する国際共同無作為化臨床試験が進行中であり,結果が期待される.

  • 山本 俊幸
    原稿種別: 総説
    2023 年43 巻1_2 号 p. 53-57
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/12/15
    ジャーナル フリー

    サルコイドーシスの皮膚病変は,自然に消えやすいものと消えにくいものがあり,それはタイプによって異なる.本邦ではミノサイクリン内服が最も頻繁に使用されるが,治療抵抗性の皮疹も少なくない.サルコイドーシスは全身性疾患なので,最も活動性のある臓器症状に対しての治療が優先される.従って皮膚症状に対して全身治療が選択される頻度は低い.その中で皮膚科医が積極的に治療介入する代表的なものは顔面に多発する局面(とくに陥凹を伴うもの)である.醜形を残しやすいので副腎皮質ステロイド内服薬を使用するが,それでも効果は確実でない.他にも従来の治療に抵抗性の皮疹も少なからずあり,新たな治療法が望まれる.

  • 玉田 勉
    原稿種別: 総説
    2023 年43 巻1_2 号 p. 58-64
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/12/15
    ジャーナル フリー

    国内外のガイドラインにおいて経口ステロイド(OCS)がサルコイドーシス治療の1st lineとして推奨されるが,OCSは実臨床および小規模の臨床試験から短期的な症状や呼吸機能の改善効果は期待できるものの,長期的な有効性つまりサルコイドーシスの自然史や死亡率を改善するかは示されていない.OCSの長期使用によりADL低下や重篤な全身性副作用のリスクが高まることもあり,代替治療薬の開発が望まれている.免疫抑制薬,TNF阻害薬,抗線維化薬,併用抗菌療法など既存の薬剤を応用した治療も試みられているが,多くは信頼できるRCT試験がなく未承認のまま使用されているのが現状である.近年,新しい作用機序の免疫調整薬の開発も進みつつあり,今後の展開が期待される.

  • 四十坊 典晴
    原稿種別: 総説
    2023 年43 巻1_2 号 p. 65-69
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/12/15
    ジャーナル フリー

    サルコイドーシスは原因不明の全身性肉芽腫性疾患であり,肺病変が高頻度に認められる.肺病変は急速に進行する場合,肺病変が一時的に出現し,自然寛解する場合,慢性に経過し,ほとんど進行を認めない場合や進行し,呼吸機能障害を呈する場合など,非常に多様な臨床経過が報告されている.進行性で日常生活に支障を来す症状を伴う肺サルコイドーシスでは経口ステロイド薬(oral corticosteroid: OCS)治療が適応となる.実臨床でCT所見は肺サルコイドーシスの治療適応を考える上で非常に重要な役割を果たす.肺サルコドーシスの特徴的なCT所見(自然寛解する可能性が高いCT所見,OCS等で治療反応性が良いCT所見,治療反応性が良い場合も,悪い場合もあるCT所見,OCS等での治療に対しても治療反応性が悪いCT所見)に関して症例を提示し,解説する.

  • 上甲 剛, 王 駿平, 吉留 江吏子
    原稿種別: 総説
    2023 年43 巻1_2 号 p. 70-76
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/12/15
    ジャーナル フリー

    ATS-JRS-ALATのガイドラインの非線維化性過敏性肺炎CT診断基準では,CT所見は肺野病変と気道病変に分け,typicalの場合はその1つずつを持つことを必須としている.一方ACCPのガイドラインの非CT診断基準は,肺野病変と気道病変を並立に扱い,単一の所見のみでtypical,compatibleを定義している.またATSでは正常小葉,高・低吸収域が混在する3density patternはnon-fibroticでは扱っていないが,ACCPでは重要所見としている.線維化性過敏性肺炎のCT像としてATS-JRS-ALATのガイドラインもACCPのガイドラインも細気管支病変+肺線維化が基本であるが,ATS-JRS-ALATのガイドラインでは重視している分布差をACCPでは考慮していない.両者が大きく異なる点は,3 density pattern(sign)の取り扱いであり,ACCPのガイドラインではそれがあれば,typicalとしており,typical,compatibleどちらにも見られるとしたATS-JRS-ALATと大きく異なる.

  • 立石 知也
    原稿種別: 総説
    2023 年43 巻1_2 号 p. 77-82
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/12/15
    ジャーナル フリー

    線維性過敏性肺炎は,様々な吸入抗原に繰り返し曝露・感作され,肺内に線維化が進行することによって生じるびまん性間質性肺疾患である.放射線所見,病理所見が多岐にわたるため,他の線維性肺疾患からの鑑別は重要な課題であった.2020年と2021年にATS/JRS/ALATとACCPから,診断へのアプローチを示す2つの診断ガイドライン・ステートメントが発表された.これらのガイドラインは,高解像度CT(HRCT)の解釈と抗原同定を重要視しているが,それだけではなく気管支肺胞洗浄所見や病理所見も含めた多角的な視点が診断確定に重要である.線維性過敏性肺炎において,抗原同定は予後の改善につながるため,臨床医はびまん性肺疾患の中から線維性過敏性肺炎を拾い上げ,抗原の同定を目指す必要がある.

  • 後藤 浩
    原稿種別: 総説
    2023 年43 巻1_2 号 p. 83-87
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/12/15
    ジャーナル フリー

    IgG4関連疾患は涙腺・唾液腺,膵,肝胆,後腹膜などの全身の諸臓器にIgG4陽性形質細胞の浸潤と線維化による腫大・結節・肥厚性病変を形成する原因不明の疾患である.両側涙腺の対称性腫大による上眼瞼の腫脹は,IgG4関連疾患にしばしばみられる臨床所見として知られているが,IgG4陽性形質細胞の浸潤は涙腺以外の様々な眼組織にもみられ,多彩な眼症状を呈すると共に重篤な視機能障害に至ることもある.IgG4関連眼疾患を正しく診断・評価するには,眼窩に特化した細いスライスによるX線CTもしくはMRIによる撮像が重要である.臨床所見のみならず,病理組織所見も共通点の多い悪性リンパ腫を確実に鑑別するには,生検組織を用いた多角的な検査が望ましい.

  • 小松 雅宙, 山本 洋, 松井 祥子
    原稿種別: 総説
    2023 年43 巻1_2 号 p. 88-92
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/12/15
    ジャーナル フリー

    IgG4関連呼吸器疾患はステロイド反応性良好で,予後良好な疾患である.一方で,肺にIgG4陽性形質細胞浸潤を呈する疾患は他にもあり,鑑別を要する疾患が多岐にわたるため,正しく診断を行うことが重要である.包括診断基準が改訂され,また海外からは分類基準が公表されている.IgG4関連呼吸器疾患と鑑別すべき疾患,特にステロイド治療に対して反応性不良な疾患に関して留意する必要がある.

解説
  • 松井 祥子, 小松 雅宙, 山本 洋
    原稿種別: 論説
    2023 年43 巻1_2 号 p. 93-97
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/12/15
    ジャーナル フリー

    IgG4関連疾患(immunoglobulin G4-related disease: IgG4-RD)は,血清IgG4高値と病変部位へのIgG4陽性形質細胞浸潤を特徴とする疾患である.主な罹患臓器は,涙腺・唾液腺・膵臓などであるが,サルコイドーシスと同様に,全身の諸臓器に病変が生じる可能性がある.このIgG4関連疾患の包括診断基準が,2011年に本邦より発表されて以降,多くの症例や研究が報告されてきた.また2019年には米国・欧州のリウマチ学会から分類基準が発表され,2020年には包括診断基準の改訂も行われるなど,新たな動きもみられている.そのため本稿では,IgG4-RDの診断基準と分類基準について解説する.

  • 竹内 正樹
    原稿種別: 論説
    2023 年43 巻1_2 号 p. 98-100
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/12/15
    ジャーナル フリー

    眼サルコイドーシスは,肉芽腫性ぶどう膜炎の代表的な疾患であり,2016年の全国疫学調査では,本疾患がわが国のぶどう膜炎の原因疾患の第1位(10.5%)であった.眼サルコイドーシスの治療の基本は消炎であり,前眼部炎症には副腎皮質ステロイドの点眼投与を行う.重度の前眼部炎症や,視機能障害のおそれのある後眼部の病変については,副腎皮質ステロイド薬の後部テノン囊下注射や内服を行う.それらで効果不十分または副作用により継続困難な症例では,免疫抑制薬や生物学的製剤を用いる.また,ぶどう膜炎では生じた炎症によって,併発白内障,続発緑内障,黄斑浮腫などの網膜疾患といった様々な眼合併症を引き起こす.そのため,ぶどう膜炎診療では炎症のコントロールと並行して眼合併症の評価,治療が必要となることが多い.ぶどう膜炎の状態やそれぞれの病態や重症度,緊急度などを総合的に考慮して治療を選択することが重要である.

短報
  • 石橋 耕平
    原稿種別: 短報
    2023 年43 巻1_2 号 p. 101-103
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/12/15
    ジャーナル フリー

    心臓サルコイドーシス(CS)は予後不良で,免疫抑制治療が治療の中心だったが不十分にて,様々な薬物/非薬物治療が登場した.心臓再同期療法(CRT)は心不全の標準治療だが,CSの十分な報告はない.CRTは炎症の影響を受けるとされるが,過去の報告の多くはステロイド使用率が低く症例数も少ない.我々はCRTに関して全国調査データにて検討し(CRTに影響する性差も考慮),CS 430例中CRTは73例(女性:男性=46:27例),ステロイド使用率は高かった.5年死亡率はcontrol/CRT女性/CRT男性群:7/10/30%と,CRT男性群で有意に不良だった.CRT群のみの検討では,男性の致死性不整脈が有意に多かった.多変量解析で女性は予後良好の予測因子だった.左室駆出率(LVEF)は不変だった.CSのCRTはLVEFの維持効果は期待されるが改善に乏しいため,有用性は限定的(特に男性)で注意を要する.

症例報告
  • 高橋 晴香, 亀田 優美, 市村 志保, 伊藤 峰幸, 四十坊 典晴
    原稿種別: 症例報告
    2023 年43 巻1_2 号 p. 104-107
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/12/15
    ジャーナル フリー

    症例は68歳,女性.ぶどう膜炎を指摘され,当院を紹介受診した.CTでは両側肺門・縦隔リンパ節腫脹と肺野に粒状影があった.67Ga citrateシンチグラフィでは肺門部に集積があり,気管支肺胞洗浄液検査ではリンパ球増多とCD4/CD8高値であり,経気管支肺生検を行い,組織学的にサルコイドーシスと診断し,経過観察されていた.診断から3年3カ月後に全身倦怠感と胸背部痛が出現し,ACEの上昇,CTで肺野陰影の悪化,67Ga citrateシンチグラフィで肺野に強い集積があった.日常生活に支障を来す胸背部痛を伴う肺サルコイドーシス症例に対し,低用量ステロイド治療を行い,速やかな症状の改善をみた.

  • 高橋 晴香, 亀田 優美, 市村 志保, 伊藤 峰幸, 四十坊 典晴
    原稿種別: 症例報告
    2023 年43 巻1_2 号 p. 108-111
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/12/15
    ジャーナル フリー

    症例は63歳女性.ぶどう膜炎を指摘され,当院を紹介受診した.経気管支肺生検で組織学的診断はできなかったが,両側肺門・縦隔リンパ節腫脹,67Ga citrateシンチグラフィで肺門への集積と気管支肺胞洗浄液検査でリンパ球増多とCD4/CD8高値があり,サルコイドーシスと臨床診断され,経過を観察されていた.診断から3年5カ月後に全身倦怠感と両側の眼瞼周囲と耳下腺部の腫脹が見られ,受診した.ACEが上昇し,67Ga citrateシンチグラフィでは両側耳下腺と両大腿の筋肉内に集積が亢進し,大腿の骨格筋MRIで67Gaの集積がある部位に一致してT2W1で高信号を示す病変が多発性にあり,耳下腺病変と大腿に筋病変を有するサルコイドーシスと臨床診断した.日常生活に支障を来す症状を伴った胸郭外サルコイドーシスに対し,低用量ステロイドで治療を行い,改善した.

  • 神谷 陽輔, 幸田 敬悟, 豊嶋 幹生, 隅田 仁, 船井 尚子, 須田 隆文
    原稿種別: 症例報告
    2023 年43 巻1_2 号 p. 112-118
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/12/15
    ジャーナル フリー

    症例は79歳女性,検診で胸部異常陰影を指摘され来院した.発熱,腹部膨満感も認めていた.腹部CTで虫垂の腫脹,周囲脂肪織濃度の上昇とリンパ節腫大を認めた.急性虫垂炎を疑い,抗菌薬の点滴投与で症状は軽快したが,約1カ月後のCTでは虫垂の壁肥厚が増強し,虫垂腫瘍疑いで腹腔鏡下手術を施行した.腹腔内は腹腔腸管漿膜全面にわたり1 mm程度の粟粒性の播種性病変で覆い尽くされていた.虫垂には炎症性の変化や腫瘍を疑う所見は認めなかった.腹膜の播種性病変の生検にて非乾酪性の類上皮肉芽腫を認め,腹膜サルコイドーシスと診断した.約半年後に出現した両下腿の皮下結節から類上皮多核巨細胞を認め,皮膚サルコイドーシスの合併も認めた.約1年後に急性虫垂炎で施行した腹腔鏡下手術では,腹腔内の粟粒性の播種性病変は肉眼的に消失しており,腹膜サルコイドーシスの腹腔内所見は自然軽快していた.腹腔内所見の肉眼的改善を観察し得た腹膜サルコイドーシスは稀であり報告する.

  • 木戸 敏喜, 松井 祥子
    原稿種別: 症例報告
    2023 年43 巻1_2 号 p. 119-122
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/12/15
    ジャーナル フリー

    症例は65歳,男性.既往歴に特記事項なし.食道癌Ⅳ期に対してニボルマブを使用される際,潜在性結核感染症と診断され,イソニアジドを投与されていた.ニボルマブ開始およそ1カ月後から発熱,呼吸困難,関節痛があり入院した.胸部CTで胸水と淡い粒状影を指摘され,粟粒結核を含め鑑別が進められたが,抗菌薬不応であり胸部粒状影が次第に明瞭となった.経気管支鏡下クライオ肺生検病理検査により,非乾酪性類上皮細胞肉芽腫を指摘された.ニボルマブによるサルコイドーシス様反応と診断しプレドニゾロン30 mgを開始したところ,胸部画像所見,全身状態が改善した.免疫チェックポイント阻害薬使用に伴うサルコイドーシス様反応については報告が少なく,同薬剤の呼吸器障害についての既報や,胸部粒状影の鑑別のポイントを交えて報告する.

  • 四十坊 典晴, 高橋 晴香, 亀田 優美, 市村 志保, 伊藤 峰幸
    原稿種別: 症例報告
    2023 年43 巻1_2 号 p. 123-126
    発行日: 2023/10/01
    公開日: 2023/12/15
    ジャーナル フリー

    症例は35歳,女性.20歳時に皮膚病変,ぶどう膜炎と両側肺門・縦隔リンパ節腫脹(BHL)があり,サルコイドーシスと診断され,経過観察されていたが,3年で自己中断した.35歳時に両上腕の皮膚病変が再度出現し,両足首の腫れと痛みがあり,当院を受診した.CTではBHLがあり,肺野には病変はなかった.皮膚生検を行い,非乾酪性の類上皮細胞肉芽腫を検出した.手指と足趾の単純X線写真では基節骨,中節骨と末節骨にレース状の溶骨性変化があり,67Ga citrateシンチグラフィと骨シンチグラフィで両手,両膝と両足にも局所性に高度の集積があった.骨シンチグラフィで集積がある部位に一致して,MRIではT1強調像で低信号域の骨病変が多発しており,骨サルコイドーシスと臨床診断した.日常生活に支障を来す症状があったので,ステロイド治療を行い,改善をみた.

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