抄録
腫瘍随伴性天疱瘡(paraneoplastic pemphigus; PNP)は主に血液系腫瘍を随伴し,重篤で多彩な粘膜皮膚症状を呈する自己免疫性水疱形成疾患である。今回われわれはPNPの口腔症状を詳細に検討するために,6例のPNP症例の解析を行った。随伴腫瘍は濾胞性リンパ腫と胸腺腫であった。口腔症状の特徴として全例で口腔粘膜の重篤なびらん,潰瘍および扁平苔癬様の粘膜疹と口唇の血痂,痂皮および,びらんの形成を伴っていた。また病理組織学的には裂隙形成と炎症性細胞浸潤による境界面皮膚炎(interface dermatitis)の所見が認められた。これらの臨床的,病理組織学的な特徴はPNPが液性免疫と細胞性免疫による両側面をもつ自己免疫性疾患であるためと考えられた。口腔症状が初発する事からPNP患者が歯科を受診する可能性は高く,歯科臨床においてPNPを診断するうえで,その病態生理,臨床症状や病理組織所見などを十分に理解することが重要であると考えられた。