抄録
人の「心理」は子どもにも成人にもそして高齢者にもある。また、元気な人にも、大きな病気を患っている人にも心理的不安や恐怖が大きい人にも同様にそれぞれの心理が存在する。現実にはその1つ1つの心理を理解することが我々対人援助者の役割となるが、基本的にはとても難しいと言わざるを得ない。同じ体験をしていても、人によってその温度や質は異なる。そこで、臨床場面において人の心理を理解するためには何が必要なのかというテーマを、特別な技術や道具ではなく、自己観察によって理解していきたい。現在の自分は昔とは何が変わってきているのか。今の価値観や考えは一体どんな体験を通して出来上がっているのか、などを考えることが、高齢者の臨床心理の理解に近づく1つの方法だと思う。「高齢になるということは」「死に近づくということは」「引き算の人生とは」などを考え、自分の周りにいる者同士でトレーニングを積み重ねて行ってもらうことができれば、このメッセージは伝わったと思う。
最後の事例についても、是非とも討論しあってほしいものである。人の理解には、①主訴、②それに伴う気持ち・状態、③援助者側の個人的感情や思い、④応答、⑤見立て、などの手順がある。それを一瞬に考えて我々は対人援助を進めているはずである。でもたまには立ち止まって、その1つ1つを検討してもらいたい。